TOKYO 2020-2021
真鍋大度は本プロジェクトで企画、コンセプト、インスタレーションの設計と、実際に使用するデータ、AIのライブラリの選定を行った。2020年春から2021年夏にかけて収集した匿名コメント、東京2020大会ビジョン、GPT-2 + rinna、VQGAN+CLIPを接続し、パンデミック下の東京を生成AIによって再構成したインスタレーション。
Context
建築やオブジェによって都市のランドスケープを構想する Pavilion Tokyo 2021 の中で、本作は空間設計とは異なる情報・データ・生成技術のレイヤーから、東京オリンピックとCOVID-19が重なった時期の社会的緊張を扱った。
作品の素材は、公式な大会ビジョンと、匿名のニュースコメントという対照的な言説から構成されている。オリンピックが掲げる言葉と、開催可否や感染状況をめぐる大量の匿名コメントを同じ生成パイプラインに入れることで、祝祭性、政治性、不安、メディア不信が混ざり合う当時の情報環境を可視化した。
生成AIは、完成度の高いイメージを作るためだけではなく、当時のモデルが持っていた未成熟さ、反復、破綻、危うさを含む媒体として使われている。物理的なモザイクレンズによって、通行人にはテキストを読ませず、近づいた鑑賞者だけが判読できる展示構造にした点も、本作の重要な制御設計である。
Technical Details
Google Doc の制作メモに基づき、収集規模、フィルタ条件、モデル、プロンプト設計、出力選定を整理した。
Data Scraping
Node.js と Puppeteer を用い、厳密な条件ではなく「おおむね1000件以上のコメントが付いている記事」を中心に収集した。後半では、オリンピックやコロナ関連だけに偏らないよう、コメントランキングから主要ニュースを選ぶ方針も検討された。
- 対象: Yahoo!ニュースのコメント欄とリプライ
- 記事数: 577件
- 収集量: 約125万コメント / リプライ
- 学習用: 390文字以上の9725件
Language Model
Hugging Face Transformers と SentencePiece を基盤に、rinna の `japanese-gpt2-medium` をファインチューニングした。匿名コメント特有の反復、論理の飛躍、集団感情の圧力を、生成文の文体として取り込んでいる。
- Model: rinna / japanese-gpt2-medium
- Framework: Transformers
- Tokenizer: SentencePiece
- Selection: 300文字以上の出力を中心に使用
Image Generation
画像生成には VQGAN+CLIP を使用した。東京2020大会公式サイトの大会ビジョンから選んだ語句を Google Translate / DeepL で英訳し、画像生成プロンプトとして入力している。
- VQGAN: CompVis taming-transformers
- Guidance: OpenAI CLIP
- Prompt source: Tokyo 2020 Games Vision
- Output policy: VQGAN+CLIP生成物は原則すべて使用
Exhibition Control
当時の生成モデルには現在一般的なセーフティ機構がほとんどなく、差別的・攻撃的な文が出る可能性があった。展示では、モザイクレンズを物理的な読解制御として用い、意図的に近づいた鑑賞者だけがテキストを読める構造にした。
- Public readability: 通行人からは判読困難
- Viewer action: 近距離でのみ読解可能
- Role: 展示空間そのものをフィルタとして設計
Pipeline
公式スローガンから導かれるイメージと、匿名コメントから生成される「それらしい声」を、同じ作品内で衝突させるための処理系。
Installation Views
ワタリウム美術館前の空地に展示された Pavilion Tokyo 2021 での記録写真。
References
作品アーカイブと、制作メモに記載されていた主要ライブラリ。
Credits
Pavilion Tokyo 2021 / Tokyo Tokyo FESTIVAL Special 13.
- Artist
- 真鍋大度
- Technical Direction
- 石橋素
- Hardware Development
- 毛利恭平
- LED Player
- 浅井裕太
- Image / Text Generation
- 2bit
- Technical Support
- 望月俊孝
- Project Management
- 小幡倫世
- Producer
- 井上貴生
関連する参照ページ
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